院長あいさつ

公益財団法人 慈圭会 慈圭病院
院長 武田俊彦

武田俊彦 慈圭病院院長

皆さまとともに歩む医療を目指しています

 精神科は、“こころ”という形に見えないものの病や傷を対象としています。もちろん、現代ではこころが脳神経の複雑な働きによって生み出されたものという考え方が主流です。そして精神医学の進歩によって、脳神経にその病による変化が見つかっている場合も少なくありません。したがって精神科での治療は、こころと脳神経の両方に働きかける必要があります。脳神経に対しては薬物療法が主体です。こころに対しては、精神療法や環境調節を行わなければなりません。しかも事例ごとに多様なバリエーションがあり、治療もそのバリエーションに併せて柔軟に組み立てなければならないのが精神科治療の特徴です。場合によっては、生活の深いレベルにまで配慮を行き届かせる必要があります。そのために、慈圭病院では豊富な人材と設備を揃えました。そして、青年期から老年期まで専門性の高い精神科治療が行える体制をとっています。さらに当院では、精神科救急医療、居住訓練施設や通所リハビリ施設、24時間アウトリーチサービスなどにも力を入れ、病気の急性期から、維持療法期やリハビリテーション期まで切れ目のない医療サービスを提供しています。
 体の病気の場合、病気が良くなると血液検査の値やレントゲン写真の像が客観的に改善します。そして、検査結果が正常になることを目標に治療が行われます。精神科では、こころという目に見えない対象の改善を目指さなければなりません。その治療の目標が、当事者の皆さまの“リカバリー(回復)”です。リカバリーとは、自分らしく気持ちの良い生活ができていると実感できる状態です。その生活では、社会に所属しているという確かな感覚があって、さらに自分の将来に希望が持てることが重要です。満足感や自尊心、勇気が自然とわきおこる状態でなければなりません。このようなリカバリーを目標に治療を進めるために、人材と設備を集注して治療にあたります。同時に、十分な成果が上がるためには当事者の皆さまの治療への積極的な参加が是非とも必要です。私たちは、当事者の皆さまとともに歩む医療を目指しています。
 慈圭病院は、1952年に開院しました。当院は開設当初から、民間でありながら個人病院ではなく、営利を目的としない財団法人として運営されています。それは現在も公益財団法人として受け継がれています。私たち慈圭病院の職員は、精神医療を通してこのような公共の利益に役立つ仕事に携われることを誇りに感じています。